レクメドの開発パイプライン

後期臨床開発パイプライン

開発品 適応症 開発ステージ
コール酸 先天性胆汁酸代謝異常症 P3実施中
ポリ硫酸ペントサンナトリウム ムコ多糖症
(ライソゾーム病の1種)
P3準備中
HTLV-1関連脊髄症 P2b準備中
変形性膝関節症 P2a終了
エルトプラジン パーキンソン病 P2a終了
ADHD P2a終了
統合失調症 臨床データ取得

プロジェクト紹介

コール酸

コール酸は、ヒトの肝臓で生合成される一次胆汁酸の主要成分であり、コレステロールを出発物質として肝細胞内のいくつもの酵素反応のステップを経て合成されます。コール酸は消化管からの脂肪吸収を促進し、コレステロールの恒常性の調節、胆汁の分泌を促進する働きがあります。これらの働きは腸肝循環による内因性および外因性の毒物除去に不可欠なものです。


コール酸(CA)

先天性胆汁酸代謝異常症(Inborn Errors of Bile Acid Metabolism: IEBAM)

先天性胆汁酸代謝異常症(単独酵素欠損によるもの)は、肝臓内でのコレステロールから胆汁酸までの生合成経路(neutral pathwayとacidic pathway)に関与する酵素のうちいずれか一つが遺伝性欠損を起こすことにより発症する疾患です。
患者数は極めて少なく、原因不明の胆汁うっ滞症のおよそ1~2.5 %(注1)、又は5 %程度(注2)存在すると言われています。国内ではこれまでに8名の患者さんが確認されています。臨床症状は、黄疸、灰白色便、濃黄色尿を主訴とし、閉そく性黄疸を伴う肝機能障害で、進行すると肝腫、脾腫を認めます。重篤な胆汁うっ滞性肝疾患(通常は乳児期に発症)や、小児後期または成人期に発症する進行性の神経系疾患、脂溶性ビタミン欠乏症等を引き起こすことがあります。進行性で、未治療の場合、肝硬変や肝不全により死亡に至ることがあります。

疾患の発症機序
この疾患の患者さんでは、コレステロールから胆汁酸に代謝されるまでの生合成ステップに障害があるため、最終代謝産物である胆汁酸の生成まで反応が進まず、毒性の強い中間代謝産物が蓄積されることにより肝障害を起こします。

また、胆汁酸が生成されないとコール酸(胆汁酸の主成分)が足りなくなるので、コール酸によって負のフィードバック調節を受けている7a-hydroxycholesterolの合成抑制が効かなくなります。これによりコレステロールから胆汁酸への代謝が止まらなくなり、異常な中間代謝産物がさらに合成され続けるという悪循環を起こしてしまいます。

この悪循環が続くことにより、肝障害や脂肪吸収不全による様々な代謝異常が進行し重症化していきます。

コール酸の作用機序

コール酸の経口投与は、体外からコール酸を補充することにより肝臓においてcholesterol 7α-hydroxylaseのダウンレギュレーションに働きかけ、異常な胆汁酸の産生を抑制するとの報告があります(Setchell and O‘Connell 2007)。胆汁の流れを賦活化し、異常な胆汁酸やビリルビンを含む毒性物質の肝クリアランスを促進することにより、生化学的及び組織学的異常を回復させ、肝機能を改善する。また、脂溶性ビタミンと脂肪の吸収を促進することにより、成長阻害を改善することが期待されます。

コール酸(CA)補充療法

コール酸は、欧米では既に医薬品として販売されており、IEBAMに対して有効性及び安全性が確立された治療法として標準的治療法とされています。(注3)
日本では、医療上の必要性の高い未承認薬として開発企業の募集が行われ、レクメドはフランスのLaboratoires CTRS社との共同開発にて、国内における開発を進めています。

注 1 : Setchellet et al., Liver Disease in Children. Mosby, St Louis: pp81-104, 1994
注 2 : 木村 他, 日児誌, 104: 686-7, 2000
注 3 : Gonzales et al., Orphanet Journal of Rare Disease, 13: 190, 2018

ポリ硫酸ペントサンナトリウム(pentosan polysulfate)

ポリ硫酸ペントサンは植物由来の半合成物質で、関節組織への複合的作用により変形性膝関節症の症状を緩和します。また、HTLV-1感染T細胞の脊髄内浸潤を抑制して、HAMの下肢機能障害を改善する効果を期待しています。
適応症:変形性膝関節症(前期第2相臨床試験) ・ HTLV-1関連脊髄症(臨床研究)

ムコ多糖症(Mucopolysaccharidoses)

長崎大学の変形性膝関節症の論文発表(注1)を引用文献として、米国マウントサイナイ医科大学より、ムコ多糖症動物モデルを用いて、ポリ硫酸ペントサンのムコ多糖症に対する治療の可能性が提唱されました。(注2)
弊社では、米国マウントサイナイ医科大学とも連携を取りながら、国内のムコ多糖症研究で中心的な役割を担っている岐阜大学の先生方と共に、今後の国内での開発の方向性を検討しています。

成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連脊髄症 (HAM)

成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連脊髄症 (HAM) は、ヒトレトロウイルスであるHTLV-1感染によって惹起される慢性進行性の脊髄炎であり、歩行障害、排尿障害等を伴います。2008年に全国的なHTLV-1キャリア及び関連疾患の実態調査が行われ、全国の初回献血者の抗体陽性者の調査から、全国のキャリア数は約108万人と報告され、また、別の報告では、HAMの発症頻度は年間キャリア10万人中3人、患者数は約3,600人と推定されています。 治療は、ステロイドやインターフェロンαが用いられていますが、ステロイドは長期投与による副作用が認められ、インターフェロンαにも副作用の問題があり、新規の治療法が求められています。
弊社では、JSTのA-STEPを活用し、長崎大学と共同で、ポリ硫酸ペントサンの新規HAM治療薬開発に向けた検証的臨床研究を実施し、ポリ硫酸ペントサンはHTLV-1感染T細胞の脊髄内浸潤を抑制して、脊髄内の慢性炎症を抑え、下肢機能障害の改善を示すことを確認しました。現在、これらの結果をもとに、薬剤の承認に向けた臨床試験を計画しています。

変形性膝関節症(Osteoarthritis)

変形性関節症とは、関節のクッションである軟骨のすり減りや筋力の低下が要因となり、関節に局所的炎症が起きたり、関節が変形した結果、疼痛、圧痛、可動域制限、水腫などが生じ、膝や股関節に起こりやすい病気です。中高年の方に多い病気で、東京大学22世紀センターの疫学調査では、50歳以上で女性の約75%、男性の約53%が変形性膝関節症と診断され、人口比で換算すると約3,000万人に該当します。一度発病すると健康な関節を取り戻すはできませんが、適切な治療を受ければ症状の進行を遅らせることで、普通に日常生活を送ることができます。
ポリ硫酸ペントサンは、ドイツのbene pharmaChem GmbH & Co. KGが製造する医薬品で、欧州では抗凝固剤(血液を固まらせないようにする薬)、間歇性跛行治療剤として、米国では慢性膀胱炎の一種である間質性膀胱炎の治療剤として承認・販売されています。一方、国内では、長崎大学医学部の丹羽正美名誉教授を中心とするペントサン研究会が実施した臨床研究を含む幾つかの臨床研究により、本剤がさらに慢性膝関節症に有効であることが示されました。(注1)
弊社では、bene pharmaChem GmbH & Co. KGと本剤の共同開発を開始し、変形性膝関節症の適応取得を目指した国内の第1相試験、前期第2相試験を実施いたしました。

注1:K. Kumagai; Clin Pharm 10: 7 (2010)
注2:E. H. Schuchman; Plos One, vol 8, issue 1, e54459 (2013)

エルトプラジン(eltoprazine)

エルトプラジンは5HT1A/1B(注1)のパーシャルアゴニスト(注2)で中枢性疾患の動物モデルで有効性が確認されており、以下の適応症に対して開発が進められております。

適応症:注意欠陥多動性障害(前期第2相臨床試験-終了)
統合失調症の認知機能障害(前期第2相臨床試験-2011年第1四半期開始)
パーキンソン病に伴うジスキネジア(前期第2相臨床試験-2010年第4四半期開始)

注1:5HT1A/1Bとは体内で重要な役割をしている神経伝達物質のひとつであるセロトニンが結合する受容体のサブタイプです。
注2:パーシャルアゴニストとは、受容体を完全に遮断するのではなく、生体反応を少しだけ残すように作用する拮抗作用を有する物質のことです。

パーキンソン病に伴うジスキネジア(不随意運動)(Dyskinesia associated with Parkinson disease)

パーキンソン病は中脳黒質のドパミン神経細胞が変性脱落することによって起こる進行性の神経変性疾患であり、ドーパミンの放出量が減少し、振戦(震え)、固縮、無動、姿勢反射異常(姿勢障害)などの症状が出現し、徐々に運動障害が進行する疾患です。日本での有病率は0.1~0.15%です。ジスキネジアとは、自分では止めらない・または止めてもすぐに出現するおかしな動きをまとめた呼び名で、パーキンソン病の治療の中で、長期間にわたるレボドパ (L-DOPA) 療法によって起き、時間とともに起こったり消えたりする不随意運動です。運動症状の変動 (motor fluctuation) はレボドパ治療開始5-10年後の患者の半数以上に起こり、年数が長くなるほどジスキネジアを起こす患者の割合は高くなります。

セロトニンが、パーキンソン病のL-DOPA治療に伴うジスキネジアに関与していることが既に報告されており(注3、注4)、さらに本剤においても動物試験にて、L-DOPA誘発のジスキネジアを抑制することが確認されました。現在、マイケル J. フォックス氏が設立したパーキンソン病の患者団体The Michael J. Fox Foundationの助成金を取得し、ヒトにおける有効性を確認する試験(POC試験)を2010年第4四半期に開始しております。

注3: Carta et al., Brain 130: 1819-1833, 2007
注4: Carta et al., Brain 132: 319-335, 2009,/p>

注意欠陥多動性障害(Attention-deficit hyperactivity disorder(AD/HD))

注意欠陥多動性障害(AD/HD)は通常7歳までに症状が確認される発達障害の一種で、集中困難・過活動・不注意などが持続する疾患で、米国では早くから小児の発達段階における精神障害として認識され、積極的な治療が行われていますが、日本での認知度は最近上がっているものの本疾患の治療は、十分に行われているとはいえません。
PsychoGenics, Inc.は同社のAD/HD動物モデルを用いて本剤をAD/HDの治療薬候補として見出し、レクメドはPsychoGenics, Inc.と共同で本剤の開発を進めております。PsychoGenics, Inc.が米国で実施した前期第2相臨床試験が終了しており、AD/HD患者における本剤の有効性と忍容性が確認されております。日本でも幾つかのAD/HD治療剤の開発が進められておりますが、レクメドはAD/HD治療薬の選択肢を広げることがAD/HD患者に福音をもたらすものと信じております。

統合失調症の認知機能障害(Cognitive impairment associated with schizophrenia(CIAS))

統合失調症は、一般人口の1%前後に発症する精神障害の一つです。その代表的症状として陽性症状(精神運動興奮、幻覚、妄想など)、陰性症状(自発性減退、感情鈍磨、意思の疎通における障害など)、認知機能障害(集中力、記憶力、整理能力及び計画能力の低下、注意力散漫、抽象的思考、問題解決力の欠如)が現れます。これまでの統合失調症治療剤は、陽性症状及び陰性症状の改善を主なターゲットとしており、認知機能障害を改善することを目的とした薬剤は開発されていませんでした。

米国のアメリカ国立衛生研究所(NIH)も統合失調症の認知障害に対する治療薬の必要性を認めており、NIHの提供する資金により本認知機能障害の臨床評価法の検証を行い(注5)、現在は次のステップとして検証した評価法を用いた治療剤の評価(注6)を進めています。本剤が動物試験において認知能力を向上させる作用が確認されていたため、本プロジェクトに応募し、採択されました。

注5: Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia (MATRICS) (www.matrics.ucla.edu)
注6: Treatment Units for Research on Neurocognition and Schizophrenia (TURNS) (www.turns.ucla.edu)